歯ぎしり・くいしばり(ブラキシズム)は悪いものなのか?

こんにちは。藤沢の歯医者「おだがき歯科クリニック」の小田柿です。


歯科医院で「歯ぎしりをしていますね」「食いしばりがありますね」と言われたことはありませんか?


歯ぎしりや食いしばりがあると聞くと、
「歯に悪いのでは?」
「できるだけ止めたほうがいいのでは?」
と考える方が多いと思います。


確かに、強いブラキシズムが続くことで、歯がすり減ったり、歯や歯周組織、顎関節などに過剰な負担がかかったりすることがあります。
しかし、ブラキシズムは本当に「悪いもの」なのでしょうか?


今回は、当院でブラキシズムについて考える際の基本的な考え方をご紹介します。


そもそもブラキシズムとは?
ブラキシズムとは、食事や会話などとは関係なく、無意識に歯を接触させる顎の運動のことです。
代表的なものには、歯をギリギリと横に動かす「グラインディング」や、歯を強く噛みしめる「クレンチング」などがあります。
特に睡眠中のブラキシズムは、自分では気づいていないことも少なくありません。
ブラキシズムによって歯が大きくすり減っていたり、歯にひびが入っていたり、朝起きたときに顎が疲れていたりすることで、初めて気づくこともあります。


ブラキシズムは「悪いもの」ではない
ここで大切なのは、ブラキシズムそのものを、単純に悪いものと考えないことです。
ブラキシズムには、生体にとって重要な生理的機能としての側面があります。
特にストレスとの関係性が深く、ストレスが強くなるとブラキシズムの活動時間は長くなる傾向があります。
一方で、ストレスの強さと、ブラキシズムを行う筋肉の活動の「強さ」とは相関しません。
つまり、ストレスが強いからといって、必ずしも「より強い力で歯ぎしりをする」という単純な関係ではありません。


ストレスとブラキシズムには関係がありますが、それは「ストレスが強いほど歯ぎしりの力も強くなる」という一方向の単純な関係ではなく、ブラキシズムがどのくらいの時間続くのかという「長さ」と、どのくらいの力で行われるのかという「強さ」は、分けて考える必要があります。


また、ブラキシズムには、ストレス性胃潰瘍の形成を抑制するなど、ストレスに対する生体の反応としての意味があると考えられています。


つまり、
「ブラキシズム=悪いものだから、なくしてしまえばいい」
という単純な考え方ではなく、
「ブラキシズムという生体に備わった機能が、どのように行われているか」
という視点が重要だと私たちは考えています。


大切なのは「止める」ことではなく「負担を減らす」こと
では、ブラキシズムが生理的な機能であるなら、歯ぎしりによって歯が削れたり、顎が痛くなったりするのはなぜなのでしょうか。


そこで重要になるのが、咬み合わせです。
ブラキシズム活動時に大臼歯が接触すると、ブラキシズム時に活動する筋の活動量が上昇します。
そのため、グラインディング運動を行うときには、大臼歯部での咬合接触をできるだけ排除することが重要になります。


ブラキシズムをしているからといって、ただ「歯ぎしりを止める」ことを考えるのではなく、
歯ぎしりが起こったとしても、歯や顎にできるだけ余計な負担がかからない状態をつくる。
これが重要な考え方になります。


生理的な下顎の位置
もう一つ重要なのが、下顎の位置です。
私たちの下顎は、常に同じ位置に固定されているわけではありません。
食事をしたり、話したり、飲み込んだりする際には、さまざまな方向に動きます。
その中で、下顎が生理的ではない位置にある状態でブラキシズムが起こると、身体にとって強いストレスになることがあります。
そのため、単純に「歯がしっかり咬み合っているか」だけを見るのではなく、下顎が無理のない位置で、スムーズに動けるかということも重要になります。


スムーズなブラキシズムのための犬歯誘導
そこで重要になるのが、前歯、特に犬歯の役割です。
下顎を横方向に動かしたとき、犬歯が適切に接触して他の歯を誘導することで、奥歯が離れるような咬み合わせを「犬歯誘導」といいます。

適切な犬歯誘導があることで、ブラキシズムによる下顎の運動をスムーズにすることができます。

反対に、下顎を動かした際に大臼歯が強く接触してしまうような状態では、咀嚼筋の活動が強くなり、歯や顎に余計な負担がかかる可能性があります。


そのため当院では、ブラキシズムを単純に「なくすべきもの」と考えるのではなく、ブラキシズムが起こったときに、できるだけ生理的でスムーズな運動ができる咬み合わせになっているかという視点を大切にしています。


歯ぎしりがある=治療が必要、ではありません
ここまで読んでいただくと、
「では、歯ぎしりがある人は咬み合わせを治療したほうがいいの?」
と思われるかもしれません。
しかし、ブラキシズムがあるからといって、すべての方に治療が必要というわけではありません。
大切なのは、ブラキシズムによって実際にどのような影響が出ているのかを見ることです。
歯のすり減り方、ひびや破折の有無、歯周組織の状態、顎関節や咀嚼筋の状態、そして咬み合わせなどを総合的に確認する必要があります。


歯ぎしりや食いしばりがあることだけを理由に、それを「悪いもの」と決めつけるのではなく、その人のお口全体を見て判断することが大切です。


ブラキシズムを「悪者」にしない
ブラキシズムは、歯科ではとかく「歯を壊す原因」として注目されがちです。
もちろん、過剰なブラキシズムによって歯や顎に問題が生じている場合には、適切な対応が必要です。
しかし、ブラキシズムそのものは、私たちの身体に備わった生理的な機能の一つでもあります。
だからこそ、
「ブラキシズムを止める」
だけではなく、
「ブラキシズムがあっても、できるだけ身体に負担の少ない状態にする」
という考え方が大切なのではないでしょうか。


当院では、歯だけを見るのではなく、歯周組織や顎関節、咀嚼筋、そして咬み合わせを含めて、お口全体の状態を確認しながら診療を行っています。


「歯ぎしりを指摘された」「朝起きると顎が疲れている」「歯が以前よりすり減ってきた」など、気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。

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