マウスウォッシュ(洗口液)の選び方

こんにちは。藤沢の歯医者「おだがき歯科クリニック」の小田柿です。

皆さんは毎日のブラッシング時などにマウスウォッシュ(洗口液)を使用されていますでしょうか。

日本人の洗口液の利用率はアメリカの約60%に対して30%程度という報告があります。

洗口液は絶対に使用しないといけないものではありませんが、ブラッシングだけで全ての細菌・プラークを除去することは不可能であり、残存したプラークが増殖するのを抑制する為にブラッシング後にマウスウォッシュを使用することは良好な口腔環境を得るために必要であると考えられています。

洗口液を使用するタイミングはブラッシング後が理想的で、洗口時間は30秒〜1分(複数回に分けても良いので)と割と長い時間しっかりすすぐ必要があります。

そして、洗口液を使ったあとに薬効成分が流れてしまわないように水でゆすがない事が大事です。

では、歯科医院やドラッグストアで販売されている洗口液は様々ありますが、どれを選んだらよいのでしょうか。

洗口液の種類には大きく分けて、2種類に分類されます。

一つは歯面やバイオフィルムフィルム表面に付着し作用する“陽イオン型洗口液”もう一つはバイオフィルム深部に浸透して作用する“非イオン型洗口液”です。

①歯面やバイオフィルムフィルム表面に付着し作用する薬剤(陽イオン型)

殺菌作用・プラーク形成抑制作用のあるコンクールF(ウエルテック)に含まれる“グルコン酸クロルヘキシジン”の他“セチルピリジニウム塩化物(CPC)”や“塩化ベンゼトニウム”が挙げられます。

これらの薬剤を含む洗口液は、陽イオン性であるため、陰イオン性であるバイオフィルム表層の細菌に付着し、滞留することで、長時間の殺菌効果が持続します。また、口臭や歯肉炎の原因となる歯垢の付着を抑制します。

②バイオフィルム深部に浸透して作用する薬剤(非イオン型)

リステリン(JNTLコンシューマーヘルス)に含まれる“フェノール化合物(エッセンシャルオイル)”やイソプロピルメチルフェノール(IPMP)が挙げられます。

陽イオン型洗口液が口腔バイオフィルム内部に対し殺菌成分として機能しないのに対して 非イオン型洗口液は口腔バイオフィルム内部まで浸透して殺菌します。

どちらのタイプも口腔内の細菌数を抑制する作用が認められていますが、使い分けとしては、

プラークの形成抑制としてブラッシング後の陽イオン型のマウスウォッシュ

食間の口腔ケアとして非イオン型のマウスウォッシュ

を使用することをオススメしています。

陽イオン型のマウスウォッシュは、ブラッシングや歯科医院での歯周病治療・メインテナンスの直後に使用することで、これらの薬剤が歯の表面に付着して、プラークの沈着を抑制する効果が期待できます。

ただし、歯磨剤に含まれる発泡剤や研磨剤は負に荷電している為、陽イオン型の洗口剤の効果を減弱させてしまうので、ブラッシング後にしっかりゆすいで歯磨剤を取り除いた上で洗口剤を使用するか、フッ素入りの歯磨剤の効果も期待する場合はブラッシング後30分くらい経過してから使用するのが望ましいです。

非イオン型のマウスウォッシュは歯面に形成され始めたマイクロバイオフィルム内に浸透し殺菌効果を得るため、ブラッシングとブラッシングの間に洗口することでプラークの形成を抑制する事が出来ます。

また、非イオン型洗口液は口腔内に残った歯磨剤による影響を受けないことが特徴として挙げられます。

その為、フッ素などの歯磨剤の薬効を期待しつつ、ブラッシング直後に使用する場合は非イオン型がオススメです。

もちろん、毎日のブラッシングや歯科医院での定期的なプロフェッショナルケアにより機械的なバイオフィルムの破壊がないと効果は限定的であることは明らかです。

あくまでプラスαとして考えるべきですが、口腔の健康から全身の健康に繋げる為に、自宅でのセルフメディケーションとして洗口液を使用してみることを検討してみてはいかがでしょうか。

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